停電時の電気の優先順位に、全家庭に共通する「正解」はありません。ただし、考え方の順番はあります。①命や健康に関わる個別の事情を先に切り分け、②情報・安否連絡、③夜間の安全な移動(照明)、④食品の温度管理、の順に、残っている電気を配分するのが基本です。この記事では、スマートフォン・冷蔵庫・照明・その他の家電を、消費電力の目安と一緒に整理し、「動かす/条件付き/動かさない」の目安表にまとめました。
冷蔵庫を守れるおすすめ機種
冷蔵庫(年間300kWh・平均約34Wを仮定)は、1000 Newで約25時間、2000 Newで約48時間の計算です。丸1日守るなら2000 Newを選びましょう。 防災用ポータブル電源のおすすめ6選を見る
- 停電時の優先順位を決める4つの軸
- スマホ・照明・冷蔵庫に、どれくらいの電気が必要か
- 家電ごとの「動かす/条件付き/動かさない」目安表
最初に「一般の優先順位」から外すもの
在宅医療機器、医薬品の保冷、乳幼児・高齢者・傷病者の健康維持、ペットの健康に関わる電気は、この記事の一般的な順位で決めてはいけません。機器メーカー、医療機関、薬剤師、電力会社、自治体などの個別の案内・計画を最優先にしてください。当サイトでは、これらの可否や順位を判断しません。
1番目の判断軸:情報と安否連絡(スマホ・ルーター)
スマートフォンは、家族との連絡、停電・避難情報の入手、地図の確認に使う、停電時の中心的な道具です。一方で、消費する電力は小さく、フル充電1回あたり約20Wh(編集部の目安)です。500Wh帯のポータブル電源が、表示容量の約8割(約410Wh)まで使えると仮定した場合、単純計算でスマートフォン約20回分の充電量に相当します。
Wi-FiルーターとONUは、合計で約10〜30Wと小さい電力ですが、つけっぱなしになるため時間で効いてきます。20Wなら12時間で240Whです。なお、停電の状況や、基地局・通信設備の状態によっては、電源があっても通信できない場合があります。通信を家族の連絡に使うなら、携帯ラジオなど電池で動く情報源も併用しましょう。
日頃から、スマートフォンの充電を満タンに近く保っておくことが、最も手軽な備えです。
2番目の判断軸:照明(夜間の移動・避難)
懐中電灯や足元灯は、転倒を防ぎ、避難経路を確保するために欠かせません。LED照明・ランタンの消費電力は数W〜10W程度と小さく、8Wを8時間使っても64Whです。ポータブル電源のコンセントにつないで使うより、電池式の懐中電灯・ランタンを別に用意しておくと、ポータブル電源の容量を温存できます。
内閣府の防災情報ページは、持ち出し品の例として、懐中電灯・携帯ラジオ・予備電池を挙げています。(出典:内閣府 防災情報のページ、確認日:2026年10月21日)
3番目の判断軸:冷蔵庫(食品の温度管理)
警視庁警備部災害対策課の投稿:冷凍庫の保冷剤を停電時に冷蔵庫へ移して食材を守る(確認日:2026年10月21日)
冷蔵庫は、優先度が状況で変わる機器です。農林水産省は、電気が復旧するまで冷蔵庫の開閉を最小限にすること、扉を開けない場合の低温保持時間の目安が冷蔵庫で約4時間、冷凍庫で約1〜2日であること(あくまで目安で、気温や食品の量で変わる)、傷みやすい肉・魚・惣菜は目安の時間を超えたら廃棄することを案内しています。
この目安から、次の考え方ができます。
- 半日以内の停電:冷蔵庫は電源を確保しなくても、扉を開けなければ対応できる範囲が大きい。通信と照明を優先する。
- 半日〜1日以上の停電:冷凍庫の食品を守るために、電源をつなぐ選択肢が出てくる。
- つなぐ場合:冷蔵庫は起動時に大きな電力を使うため、ポータブル電源の瞬間最大出力も確認する。1日分の消費電力量は、本体ラベルの「年間消費電力量」から割り出せる(計算方法はこちら)。
(出典:農林水産省、確認日:2026年10月21日)
家電ごとの「動かす/条件付き/動かさない」目安表
数値は、東京電力エナジーパートナー「主な電気機器のアンペアの目安」の想定値(100Wで1Aとして換算)、または編集部の目安です。実際の消費電力は、各機器の銘板や取扱説明書で確認してください。
| 機器 | 消費電力の目安 | 停電時の考え方 |
|---|---|---|
| スマートフォンの充電 | 約10〜20W | 動かす:最優先。残量を記録しながら使う。 |
| Wi-FiルーターとONU | 約10〜30W | 動かす:通信を使う場合。時間で電力量が増える点に注意。 |
| LED照明・ランタン | 数W〜10W | 動かす:夜間の安全のために。電池式を併用する。 |
| ノートパソコン | 約30〜60W(編集部目安) | 条件付き:在宅勤務など、必要な時間に絞る。 |
| 液晶テレビ(42型) | 約210W | 条件付き:情報収集はスマートフォンやラジオで足りる場合が多い。短時間に絞る。 |
| 冷蔵庫(450Lクラス) | 約250W(間欠運転で平均はより小さい) | 条件付き:停電が半日〜1日を超えそうなら検討。起動電力に注意。 |
| インバータエアコン(冷房) | 約580W(立ち上がり時に約1,400W) | 動かさない前提:容量・出力とも負担が大きい。暑さ・寒さ対策は別の手段で。 |
| 電子レンジ | 約1,500W | 動かさない前提:出力が足りないことが多い。 |
| IHジャー炊飯器 | 約1,300W | 動かさない前提。 |
| ヘアードライヤー | 約1,200W | 動かさない前提。 |
「動かさない前提」の家電は、ポータブル電源の容量帯・出力によっては動かせる場合もありますが、短時間でも容量を大きく消費するため、備えの計画には入れないのが安全です。暑さ・寒さで健康に影響が出る場合の対応は、自治体の案内や、涼しい・暖かい場所への移動を含めて考えてください。
家庭ごとの再配分チェック表
紙に書き出して、家族で共有しておくと、いざというときに迷いません。
| 確認項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 機器名と目的 | 連絡、食品、照明、仕事など |
| 消費電力(W) | 銘板・取扱説明書から記入 |
| 使いたい時間(h) | 1日のうち何時間必要か |
| 電源の残量 | 開始前と、数時間ごとに確認 |
停電が長引くほど、優先順位は入れ替わります。停電は何時間続く?3時間・半日・1日で考える電源の備えもあわせて確認してください。世帯の条件(乳幼児・高齢者・ペット・在宅勤務)による違いは、家族構成から考えるポータブル電源で解説しています。
よくある質問
Q. 停電時、冷蔵庫と通信のどちらを優先しますか?
短時間(半日以内)なら、通信を優先し、冷蔵庫は扉を開けずに対応する考え方が基本です。停電が長引く場合は、冷凍庫の食品を守る目的で冷蔵庫に電気を回す選択肢を検討します。
Q. エアコンや電子レンジは使えますか?
消費電力が大きく、多くの家庭向けポータブル電源では、容量・出力とも負担が大きくなります。基本は使わない前提で、備えを考えるのが安全です。
Q. 電池式の照明は必要ですか?
必要です。電源に頼らない照明を持つことで、ポータブル電源の容量を、スマートフォンやルーターなどの通信に温存できます。
冷蔵庫に必要な電力量は「消費電力×時間」だけでは決められない
冷蔵庫は、庫内が設定温度に近づくとコンプレッサーが止まり、温度が上がると再び動く家電です。そのため、銘板に書かれた定格消費電力を24時間ずっと掛け算すると、実態より大きく見積もることがあります。反対に、カタログの年間消費電力量だけで短時間の停電を計算すると、夏の暑さ、設置場所、食品量、扉の開閉回数による差を拾い切れません。
最初の目安は、冷蔵庫の年間消費電力量を365日で割る方法です。たとえば年間300kWhなら、単純平均は1日約0.82kWh、つまり約820Whです。ただしこれは平常時の年間平均です。停電当日の室温や使い方によって前後するため、ポータブル電源の変換ロスと余裕を見込み、平均値ぴったりではなく一段余裕のある容量を考えます。
より現実に近づけるには、平常時にワットチェッカーで24時間の消費電力量を測ります。夏と冬では差が出るため、できれば季節を変えて記録してください。測定機器の定格を確認し、濡れた手で扱わず、延長コードの多重接続は避けます。家庭で測定できない場合は、取扱説明書やメーカー窓口で消費電力量を確認します。
起動時の電力にも注意する
冷蔵庫はコンプレッサーが動き始める瞬間に、運転中より大きな電力を必要とすることがあります。ポータブル電源の「容量Wh」が十分でも、「定格出力W」や瞬間的な出力が足りなければ起動できません。容量は何時間使えるか、出力はその家電を動かせるかを見る数字です。両方を分けて確認してください。
実機で試すときは、冷蔵庫と電源の取扱説明書に従い、平常時に短時間の接続テストを行います。異音、異臭、異常な発熱、頻繁な停止があれば直ちに使用を止めます。停電本番で初めて接続する状態を避けることが、最も確実な備えの一つです。
6時間・12時間・24時間で運用を切り替える
停電直後から6時間
停電直後は、冷蔵庫の扉をむやみに開けないことが優先です。庫内の冷気を逃がさず、停電の範囲と復旧見込みを確認します。短時間で復旧する可能性がある段階では、すぐにポータブル電源へ切り替えるより、スマートフォンや照明の電力を確保しながら状況を見た方がよい場合もあります。
6時間から12時間
復旧見込みが立たない場合は、冷蔵庫の実測値と残量をもとに運転時間を配分します。常時つなぐ方法だけでなく、取扱説明書上問題がないことを確認したうえで、庫内温度を見ながら電力を集中させる考え方もあります。ただし、自己流の頻繁な電源オン・オフは冷蔵庫に負担をかける可能性があるため、メーカーの案内を優先してください。
12時間から24時間以上
長期化すると、冷蔵庫だけに全電力を使うか、通信・照明・扇風機などにも分けるかの判断が必要です。家族で「冷蔵庫に何Wh、通信に何Wh、夜間照明に何Wh」と上限を決め、残量を定時に記録すると、使い切る時刻を予測しやすくなります。ソーラーパネルを使う場合も、天候と設置条件で発電量が変わるため、表示上の最大出力をそのまま期待しないでください。
食品を守るために電源以外でできること
- 停電前に保冷剤を凍らせ、庫内に余裕がある範囲で活用する
- 飲料、調味料、すぐ食べる食品の場所を家族で共有し、扉を開ける時間を短くする
- クーラーボックスを用意し、必要な食品だけをまとめて移せるようにする
- 庫内温度計を置き、感覚だけで判断しない
- 停電開始時刻、通電再開時刻、庫内温度を紙にも記録する
食品を食べられるかは、停電時間だけで一律に決められません。庫内温度、食品の種類、包装状態、季節によって変わります。見た目やにおいだけで安全を判断せず、行政や食品メーカーの案内に従い、迷う食品は無理に食べないでください。乳幼児、高齢者、妊娠中の人、基礎疾患がある人がいる家庭では、特に慎重に判断します。
500Wh・1000Wh・2000Wh級の考え方
500Wh級は、冷蔵庫の実測消費が小さく、停電が短く、通信や照明の備えを別に持つ家庭向けです。冷蔵庫へ使える実容量は公称容量より小さくなるため、丸一日分と決めつけないでください。
1000Wh級は、冷蔵庫と最低限の通信・照明を組み合わせやすい中心帯です。ただし、同じ1000Whでも定格出力、充電速度、重量、保証、拡張性が異なります。冷蔵庫の起動テストを行い、実際の24時間消費と比べて判断します。
2000Wh級は、長時間化や複数家電への配分に余裕を持たせやすい一方、価格と重量が増えます。置き場所、避難時に運べるか、家族の誰が操作するかまで含めて選びます。容量を増やすほど安心とは限らず、日常の点検と充電手段が伴って初めて役立ちます。
夏・冬と設置場所で変わる注意点
夏は室温が高く、冷蔵庫の運転時間が長くなりやすい一方、ポータブル電源も高温を避ける必要があります。直射日光が当たる窓際や、閉め切った車内に置かないでください。冬は暖房器具へ電力を回したくなりますが、電熱系の家電は消費電力が大きく、冷蔵庫と同時に使うと定格出力を超えることがあります。
電源は水がかからず、吸排気口を塞がず、転倒しにくい場所へ置きます。冷蔵庫の背面や狭い隙間に押し込まず、ケーブルが通路を横切らないようにします。乳幼児やペットが端子に触れない配置も必要です。
購入後に行う冷蔵庫バックアップテスト
- 冷蔵庫の型番、年間消費電力量、定格消費電力を記録する
- ポータブル電源の容量、定格出力、使用温度範囲を確認する
- 満充電に近い状態で冷蔵庫を接続し、正常に起動するか確かめる
- 1時間後、3時間後、6時間後の残量と庫内温度を記録する
- 異音、異臭、発熱、エラー表示がないか確認する
- 記録から家庭の1日分の必要量を計算し、他の家電への配分も決める
- 家族が説明書を見ずに接続できるか、防災訓練で確認する
テスト結果は冷蔵庫の扉や防災用品箱に保管し、季節や冷蔵庫の買い替え後に更新します。「何となく動くだろう」ではなく、自宅の冷蔵庫で確認した記録が、停電時の判断材料になります。
冷蔵庫以外との電力配分表を作る
停電時に必要なのは冷蔵庫だけではありません。情報収集のスマートフォン、通信のルーター、夜間の照明、暑さ対策の扇風機なども必要になります。合計容量から冷蔵庫分を先に差し引くのではなく、生命・安全、連絡、食品の順で家庭の優先順位を決めてください。
たとえば1000Wh級を用意していても、変換ロスがあるため1000Whを全量使えるわけではありません。使用可能量を保守的に見積もり、その中から「通信を維持する分」「夜間照明の分」「冷蔵庫の分」を割り振ります。残量20%など家庭で決めた警戒線に達したら、使用機器を減らすルールも有効です。
| 用途 | 平時に確認する項目 | 停電時の運用 |
|---|---|---|
| 冷蔵庫 | 24時間の実測Wh、起動可否 | 扉を開けず、温度と残量を記録 |
| 通信 | ルーターとONUの合計W | 必要な時間帯に限定する案も検討 |
| 照明 | LED1灯のW数 | 家族が集まる場所へ集中 |
| 扇風機 | 弱運転のW数 | 熱中症対策を優先 |
冷蔵庫目的で避けたい買い方
一つ目は、Whだけを見て出力を確認しないことです。二つ目は、セール価格だけで保証や国内サポートを確認しないことです。三つ目は、本体重量と保管場所を考えず、停電時に移動できない製品を選ぶことです。四つ目は、ソーラーパネルがあれば必ず復旧まで持つと考えることです。
購入前には、冷蔵庫の型番を控え、候補製品のメーカーへ接続可否を問い合わせると確実です。回答はメールやメモで残し、家庭の防災ファイルへ入れます。保証登録が必要な場合は期限内に行い、購入証明も保存してください。
年1回は家電と家族の変化を反映する
冷蔵庫を買い替えた、家族が増えた、在宅勤務を始めた、引っ越して浸水リスクが変わったといった変化があれば、電力計画も更新します。ポータブル電源の残量だけを点検しても、必要量が古いままでは役立ちません。
防災の日など日付を決め、冷蔵庫を1〜3時間接続して残量の減り方を記録します。前年より急に減る場合は、冷蔵庫の運転状況、室温、ポータブル電源の状態を切り分けます。異常を感じたら無理に試験を続けず、メーカーへ相談します。
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出典(確認日:2026年10月21日)
- 農林水産省「停電や断水、大雨による浸水に遭われた地域の皆様へ」 https://www.maff.go.jp/j/fs/foodpois_flooding.html
- 内閣府 防災情報のページ https://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/check.html
- 東京電力エナジーパートナー「主な電気機器のアンペアの目安」 https://www.tepco.co.jp/ep/private/ampere2/ampere03.html